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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(あ)1798号 判決 1952年8月23日

本籍

鳥取県気高郡青谷村

住居

京都市伏見区越前六〇二番地 河村安太郎方

無職

円藤龍之助

昭和三年七月二五日生

本籍並びに住居

京都市下京区西九条川原城町八番地

無職

西村勝二

昭和三年七月二九日生

右の者等に対する窃盗被告事件について昭和二五年五月一〇日大阪高等裁判所の言渡した判決に対し、各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人谷口義弘の上告趣意第一点について。

論旨は量刑不当の主張であつて適法な上告理由とならない。

同第二点について。

当裁判所の判例に従えば、憲法一四条は「法が国民の基本的平等の原則の範囲内において、各人の年齢、自然的素質、職業、人と人との間の特別の関係等の各事情を考慮して、道徳、正義、合目的性等の要請より適当な具体的規定をすることを妨げるものではない。」(昭和二五年(あ)第二九二号同年一〇月一一日大法廷判決)。また「犯人の処罰は憲法一四条にいわゆる人種、信条、性別、社会的身分又は門址による差別的処遇ではなく、特別予防及び一般予防の要請に基いて各犯罪各犯人毎に妥当な処遇を講ずるのであるから、その処遇の異なることのあるべきは当然である。事実審たる裁判所は、犯人の性格、年齢及び境遇並に犯罪の情状及び犯罪後の情況等を審査してその犯人に適切妥当な刑罰を量定するのであるから、犯情のある面において他の犯人に類似した犯人であつてもこれより重く処罰せられることのあるのは理の当然であり、これを目して憲法一四条の規定する法の下の平等の原則に違反するということはできない。」(昭和二三年(れ)四三五号同年一〇月六日大法廷判決)。原判決が被告人等の量刑を考察するにあたつて、「本件犯行の動機、態様その他諸般の情状殊に被告人等が当時犯罪検挙の職責を有する司法巡査でありながらその着用した制服を利用して犯したものである点を顧慮」したというのは、司法巡査という職業に伴う社会的道義的責任の重大さを情状として参酌したという趣旨に解すべきであるから、これを以て所論のように憲法一四条の平等の原則に違背するものと云い得ないこと、前掲二つの判例の趣旨に徴して明らかである。論旨は理由がない。

なお記録を調べてみても本件に刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よつて刑訴四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見を以て主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 本村善太郎)

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